屍ハンターと屍の会話
「ああ、いたいた。おーい」
「うわ、ハンターじゃん」
「早めに見つかって良かったわー」
「なんなの、狩るの?」
「仕事だから狩るつもりだけど」
「仕事だからってさ、罪悪感とかないの? 一応、こうして喋ってるわけじゃん」
「それはほとんどないなぁ。だって人襲うし」
「まぁそうなんだけどね」
「でしょ。んじゃやるね」
「ちょっと待ってよ。一応俺、屍協会のこの辺りの支部の理事やってんだよね。俺やっちゃうと協会が黙ってないと思うけどなぁ」
「なに、屍協会ってのがあるの?」
「あるよ。しかも結構デカい。この国全体にネットワークがあるし、ゾンビもスケルトンも所属してる」
「うわぁ、めんどくさそう」
「そうなんだよ。毎週木曜に定例会ってのがあって、まぁ無駄な会議なんだけどね。分かりきった問題点を挙げながら、うーん困ったねぇ、とみんなで唸るだけ。そういうのに出席したり、最近またゾンビとスケルトンで派閥争いが激しくなってきてるんだよね……」
「大変そうだね。まぁ俺が言ったのは狩るのがめんどくさいってことなんだけど」
「おっかないなぁ……。それにしても、協会を知らないハンターなんて初めて会ったんだけど、きみはもしかして新人?」
「そうそう、今日からやってんだよね」
「マジ? んじゃこれ、ワンチャン勝てるかもなぁ。俺、何回かは手伝いでハンター倒したことあるんだよね」
「あーそうなんだ。まぁでも、たぶん大丈夫と思う」
「なんか自信あるみたいだけど、何、もともと武術とかやってたの?」
「いや全然。でも金持ちだからめっちゃ良い武器もってきてるんだよね」
「さっきからなんか銃イカツイなとは思ってたんだよ。やっぱ強いのかそれ」
「銀の弾が同時に6発でる。それを3秒間で15回連射できる」
「めちゃくちゃじゃん。そんなの撃たれたら死んじゃうよ」
「そういう道具だからね。じゃあそろそろ」
「ねぇ、さっきからなんか急いでない? なんなの。なんかもうちょっと、一悶着しようよ」
「ええ……もう十分でしょ。生放送始まっちゃうんだよね」
「テレビかネットか知らないけど、録画とかアーカイブとかあるよね。そんな急ぐ必要あるの?」
「放送してるときに観てたらみんなで一緒に盛り上がれるんだよ、Twitterとかで」
「ああ、わかる。後からタイムライン追っかけてるときさぁ、ちょっと寂しいよね。空になったピザの箱を見ている気持ちになる」
「ちょっとよくわからないけど。じゃあそろそろ」
「わかったわかった。じゃあこうしよう。また後日、殺してもいい屍を殺しやすく用意するから、今日のところは見逃してくれない?」
「なんだよ殺してもいい屍って。仲間じゃないの?」
「まぁいろいろあるんだよ。全部で3,000体くらいは用意できると思うんだけど、どう?」
「それはすごいな」
「一応理事だからね」
「3,000体はアツいなぁ」
「でしょ。んじゃまた連絡するよ。LINEやってる?」
「やってるやってる、これがID」
「また連絡するよ」
「うん。んじゃまたね」