ストームクイーンの後悔
リンデンバウムの香りが鼻腔を満たす入浴剤の溶け込んだ湯を手ですくい、凝りに凝った首にかけながら、ストームクイーンは考えている。
「どうしてこんなに重い兜を被っているのだろう?」
帝国で召抱えている仕立屋に衣装を発注する際、あまりに浮き浮きしてしまって、あれもこれもと注文をつけ過ぎてしまった。
「兜には山羊の角が絶対に必要だ。蝙蝠の羽も欠かすな。腕には鴉の翼を称えよ」
メニューの美味しそうなものを片っ端から注文した挙句食べきれない子供のような発注だったが、仕立屋の腕が大変素晴らしく、見事な衣装が完成した。
「ドラゴンが奪われるより先に、首が折れるかも」
ストームクイーンに時間はない。